Home > yenbridge   |   はてなブックマークに追加 Buzzurlにブックマーク この記事をLivedoorクリップにクリップ! Yahoo!ブックマークに追加 このページを Google Bookmarks に追加 RSS

為替デリバティブ評価業務

投資リスク管理

弊社では、各種の為替デリバティブの価格を算定しております。

  • 通貨スワップ(CRS)
  • 通貨オプション
  • 為替予約

なお、近年は様々な条件が付された為替デリバティブが存在しており、下記のような取引についても対応しています。

  • ノックアウト条項(自動消滅条項)付の為替デリバティブ
  • レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブ
  • ギャップトリガー付の為替デリバティブ


近年の為替デリバティブの傾向

為替デリバティブは、近年の急激な円高によって、損失額が拡大しているケースが多く発生しています。

為替デリバティブは、外貨建てのデリバティブを総称して使用される用語ですが、主に多額の評価損益が発生するものは、通貨交換型のスワップ取引です。

デリバティブ取引は、フォワード取引(先物取引)、オプション取引、スワップ取引の3つに分類されます。

それぞれを簡単に比較すると、下記のようになります。

デリバティブの種類

種類   取引の特徴 読みが外れた場合
フォワード取引   将来の売買を現時点で決定する取引例:
 1年後に1ドル100円で購入する
基本的には、キャンセルできないため、損失が発生する。
オプション取引   権利の売買例: 1年後にトヨタ株を1,000円/株で
 購入する権利を購入する
権利を放棄すれば、損失を負う必要はない(ロングの場合)。
スワップ取引   何かと何かを交換する
 例:今後3年間、固定金利と変動金利を交換する。
基本的には、キャンセルできないため、損失が発生する。


通貨スワップの種類

ここで、通貨スワップが最も評価損益が大きくなると記載しましたが、通貨スワップは下記のように分類されます。
伝統的に利用されてきた通貨スワップは、下記のベーシス・スワップですが、近年は通貨交換取引のタイプが急激に増えてきています。



ベーシス・スワップ ・各通貨の変動金利を交換する
通貨交換取引 ・外貨建借入金のヘッジに用いられることも多く、借入元本と同様に契約時に元本交換を行うケースも多い。


通貨スワップと同様の取引:為替予約取引との比較

通貨スワップが最も評価損益が大きくなるといいながら、同様の取引の先物取引、オプション取引も存在します。

通常の為替予約取引は、1年後の米ドル/日本円の為替レートを固定するなどの契約(個別予約)になりますので、1つの取引は1回だけ資金の受払が行われることになります。

ただし、継続的に為替予約が必要な会社(毎月1百万ドルの部品を海外から仕入れている会社など)は、為替予約が1回だけではなく、毎月必要になってきます。

このような場合、会社は月1百万ドルの資金決済が必要になってきますので、1百万ドルを日本円で24ヶ月間交換する為替予約を締結することになります。

スワップは、「何かと何かを交換する取引」ですが、24ヶ月間の米ドルと日本円を交換(予約)する取引を為替予約取引というのか、 通貨スワップというのかは、微妙なところです。

この取引を「24ヶ月間に渡って通貨を交換する」と考えた場合は、「通貨スワップ」という呼び方になると思いますし、
「為替予約取引を24回連続で行う」と考えた場合は、「為替予約」という呼び方になると思います。

呼び方は違えど、全く同じ取引を意味していますので、混乱せずに何をしているかということをよく理解して下さい。
デリバティブには、このように、呼び方が違うだけで全く同じ内容の取引である場合もよくありますので、本質を見抜くことが重要になります。

連続する為替予約取引を、包括為替予約取引といいますが、通貨スワップと同様に為替予約取引を利用するケースは、下記のようになります。

【包括為替予約契約の例示】

取引形態 毎月リセット型米ドル買い/円売り予約
取引約定日 2012年3月31日
計算代理人 A銀行
米ドルの買い手 B商事
米ドルの売り手 A銀行
営業日 東京(修正翌営業日)
受渡日 2012年4月以降2017年3月までの毎月末営業日(計60回)
リセット日 受渡日の2東京営業日前
元本 1百万米ドル
為替予約レート 70円/米ドル
為替スポット・レート 78円/米ドル(2011年12月30日時点)


通貨スワップと同様の取引:オプション取引との比較

同様にオプション取引においても、同様の効果を実現する取引があります。

このタイプは、コール・オプションの買いとプット・オプションの売りをクロスで行い、通貨スワップと同じ決済取引を行います。

一般的には、オプション取引は1回の権利行使で終了します。通貨スワップと同様の効果を作り出すために、為替予約と同様に複数回の契約を同時に締結します。
たとえば、2年間毎月決済をするためには、24個のオプション契約を同時に締結することになります。

ただし、先物と違う点は、権利売買のため、一方にしか損益が出ません。この点を通貨スワップと同じにするためには、 一定の為替レート以上でプラスとなるオプションと一定の為替レート以下でマイナスとなるオプションを組み合わせする必要があります。

よって、結果的には、24回×2=48個の通貨オプションを契約することになるのです。

オプションによって、24回決済を行う通貨オプションとするためには、下記のようなオプション取引の組み合わせを24ペア締結します。

コール・オプション

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 A商事
米ドルの買い手 A商事
米ドルの売り手 A銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日

プット・オプション

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 A銀行
米ドルの買い手 B商事
米ドルの売り手 A銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日


決済額と評価額の違い

為替デリバティブの決済額は、決済レートの計算日に決定しますが、為替デリバティブの評価額と実際の決済額は、何の関係もないというのが特徴です。
詳しくは、別ページで紹介していますので、こちらをご覧ください。「時価評価と決済額の違い

例えば、1ドルを90円で購入する通貨スワップは、為替レートの決定日に1ドルの価値と90円を比較して決済額を決定します。

決済額は、差金決済(円建の差額のみを受取ったり、支払ったりする決済方法)と、総額でそれぞれ支払いを行う方法の2種類がありますが、 実際は受取った米ドルの価値を円環算して損益を把握するため、決済方法が違っても、「損した金額」「得した金額」に違いはありません。

米ドル買い・日本円売りの通貨スワップの評価額は、評価する時点の為替レート(スポット・レート:その時のレート)と日米金利差から作成していきます。

これは、別のページでも触れていますが、

米ドルの金利:5%
日本円の金利:1%

とした場合、1年後に今と同じ為替レートで決済する場合、米ドルを売る方が得します。

1年間5%(米ドル)の金利を受取って、今と同じ為替レートで買い取ってもらえるとすると、リスクを取らずに利益が確定することになります。

基本的に、デリバティブの世界では、このような都合のよい取引(リスクなしに利益だけ確定する:裁定取引)というものは許されないと考えます。

このような性格を有しているため、米ドルを1年間運用して得られる5%というものは、控除して為替予約を行う必要があります。
※厳密には、日本円の金利1%も加味して、為替予約を行います。

たとえば、1ドル=90円だったとすると、1年後の米ドル金利5%と日本円金利1%による影響を等しいとして評価することになります。

1ドルの1年後の価値=1ドル×1.05=1.05ドル

90円の1年後の価値=90円×1.01=90.9円

この二つが等しいとすると、1年間のフォワードレート(為替予約レート)は、
フォワードレート=90.9円÷1.05=86.6円/米ドル
となります。

日本円と米ドルの金利を比較すると、米ドルの金利の方が高いため、フォワードレート(為替予約レート)は、 今の為替レート(スポットレート)よりも低く(円高)になります。



為替デリバティブの評価の前提

為替デリバティブは、為替スポット・レート(その時のレート)と金利差によって算定します。

先ほど、フォワードレート(為替予約レート)と記載しましたが、為替デリバティブはフォワードレートを使用して計算します。

日本円と米ドルの金利を比較すると、米ドルの金利の方が高いため、フォワードレート(為替予約レート)は、 今の為替レート(スポットレート)よりも低く(円高)になります。

2011年12月末時点で、フォワード・レートを作成すると下記のようになります。

為替フォワードレート(日本円と米ドル)

フォワードレート

このグラフからも分かるように、年数が長くなればなるほど、金利差による影響が増加して、ますます為替レートは低く(円高)なっていきます。

すなわち、為替デリバティブは、全て為替レートが低く(円高)なっていくことを前提に評価をしていきます。

先ほど、決済額と評価額は何の関係も無いと書きました。
2011年12月末時点では、為替スポット・レートは1ドル=77円でしたので、 1ドル=70円で為替予約をした場合、為替レートは70円を下回らないかもしれません。

ただし、フォワードレートは、10年くらいで70円を下回っていき、25年くらいで60円を下回ります。

為替デリバティブの考え方としては、デリバティブの期間において、1ドル=70円になっても、ならなくても特に構いません。

2011年12月時点を基準にすると、10年の日本円と米ドルの為替予約は70円/米ドルなので、 70円/米ドルよりも高い為替予約レートで契約が締結できると利益が出ます。

デリバティブは、相手先と締結したデリバティブ取引を、ニュートラルにするために、別の先と逆の契約を締結してヘッジします。
下記のように、A社とデリバティブ取引を締結したB社は、デリバティブのリスクをヘッジするために、C銀行とデリバティブ契約を締結します。

フォワードレート

2011年12月時点を基準にすると、B銀行はA社と10年間の為替予約を71円/米ドルで締結して、 C銀行と70円/米ドルで契約を締結できると1円/米ドルの利益となります。



通貨スワップと通貨オプション

コール・オプションの買いとプット・オプションの売りをクロスで行い、通貨スワップと同じ決済取引を行う場合がよくあります。

一般的には、オプション取引は1回の権利行使で終了します。通貨スワップと同様の効果を作り出すために、為替予約と同様に複数回の契約を同時に締結します。
たとえば、5年間毎月決済をするためには、60個のオプション契約を同時に締結することになります。

ただし、先物と違う点は、権利売買のため、一方にしか損益が出ません。この点を通貨スワップと同じにするためには、 一定の為替レート以上でプラスとなるオプションと一定の為替レート以下でマイナスとなるオプションを組み合わせする必要があります。

よって、結果的には、60回×2=120個の通貨オプションを契約することになるのです。

オプションによって、60回決済を行う通貨オプションとするためには、下記のようなオプション取引の組み合わせを60ペア締結します。



コール・オプション

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 A商事
米ドルの買い手 A商事
米ドルの売り手 B銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日

プット・オプション

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 B銀行
米ドルの買い手 A商事
米ドルの売り手 B銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日


為替デリバティブでは、このような大量の通貨オプションを締結して、「オプション契約」として通貨スワップにしているケースがたくさんあります。

これを通貨スワップとして締結すると、下記のようになります。

通貨スワップ

取引約定日 2012年3月31日
当事者1 A商事
当事者2 B銀行
当事者1の支払額 7,300,000円(73円/米ドル)
当事者2の支払額 100,000米ドル
交換サイクル 毎月末
期日 2017年3月31日


通貨スワップと通貨オプションの評価における決済額

通貨スワップも通貨オプションも、「2. 為替デリバティブの評価の基本的な考え方」 で記載したように、為替スポット・レートと金利差から作成した、為替フォワード・レート(為替予約レート)を基本とします。

ただ、実際には通貨オプションを評価する際には、ボラティリティ(変動率)を加味することが必要となります。
ボラティリティに関する考え方は、「ストック・オプション 2.6 ボラティリティ」 をご覧下さい。

通貨スワップは、為替フォワードレートによって決済額を作成して、その割引現在価値を評価額とします。

下記の契約の決済額を、フォワードレートから作成してみます。

通貨スワップの契約内容

取引約定日 2012年3月31日
当事者1 A商事
当事者2 B銀行
当事者1の支払額 7,300,000円(73円/米ドル)
当事者2の支払額 100,000米ドル
交換サイクル 毎月末
期日 2017年3月31日


上記の契約を、フォワードレート(緑色)を使用して決済額(灰色)を計算すると、下図のようになります。

フォワードレートと決済額の関係

通貨スワップの決済

通貨スワップの計算方法は、「8. 通貨スワップの評価」 をご覧下さい。



ここで、契約は分かりやすいように、プラスの決済額しか発生しないように作成していますが、実際にはマイナスの決済額も当然発生することになります。

これを120個の通貨オプションの決済として考えると、「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」と「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」 を合成することになります。

下記のような、A・Bの契約がそれぞれ60個あると思ってください。共通点は、行使価格(73円/米ドル)を上回る円安の場合、 「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」が行使されて、A商事が儲かります。

行使価格(73円/米ドル)を下回る円高の場合、 「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」が行使されて、B銀行が儲かります。

A:米ドル買・日本円売のオプションの買いの内容

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 A商事
米ドルの買い手 A商事
米ドルの売り手 B銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日から毎月
満期 2017年3月31日


B:日本円買・米ドル売のオプションの売りの内容

取引約定日 2012年3月31日
権利行使者 B銀行
米ドルの買い手 A商事
米ドルの売り手 B銀行
元本 100,000米ドル
行使価格 73円/米ドル
権利行使日 2012年4月30日から毎月
満期 2017年3月31日


「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」と「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」のそれぞれ60回の権利行使による決済額は、 下記のようになります。



A:米ドル買・日本円売のオプションの買いのフォワードレートと決済額の関係

コール・オプションの決済額

B:日本円買・米ドル売のオプションの売りのフォワードレートと決済額の関係

プット・オプションの決済額

「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」と「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」の決済額をそれぞれ合計して表示すると、 下記のようになります。

オプション・クロス取引のフォワードレートと決済額の関係(A+B)

オプションのクロス取引

この決済額は、通貨スワップの決済額と同じです。
通貨オプションは、単体として評価することももちろんできるのですが、合算すると通貨スワップとなります。

再三になりますが、「為替予約取引」、「通貨(為替)オプション取引」、「通貨スワップ(クーポンスワップ)取引」といった場合、 同じ内容の取引となっている場合が多いのです。



レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブ

通貨スワップ、通貨オプション、為替予約と呼び方が違っても、同じ契約内容として同じものがあります。

評価損益が大きくなる要因として、レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブがあります。

レシオという表現は、あまり外資系金融機関の契約書には入っていませんので、 日本の金融機関(特に銀行)特有の用語に思います。

ここでのレバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブとは、一定の為替レートよりも下回った場合(上回った場合)、 元本が2倍、3倍の金額に変更されるものをいいます。

通貨オプションでも、通貨スワップでも同様の形式になりますが、ここでは通貨スワップを例にして契約内容を掲載します。
通貨スワップを例にすると、レバレッジ(レシオ)型の契約内容は下記のようなものになります。

レバレッジ(レシオ)型通貨スワップの契約内容

取引約定日 2012年3月31日
当事者1 B商事
当事者2 A銀行
当事者1の支払額 73円/米ドル以上の場合:7,300,000円
73円/米ドル以下の場合:14,600,000円
当事者2の支払額 73円/米ドル以上の場合:100,000米ドル
73円/米ドル以下の場合:200,000米ドル
交換サイクル 毎月末
期日 2017年3月31日


この契約では、為替レートが73円/米ドルを下回ると、交換する(スワップ)金額が2倍になっています。

オプション取引との比較で、フォワードレートと決済額の関係を掲載しましたが、同様に、2011年12月末時点でのマーケットレートで作成した 評価上の決済額は下記のようになります。

レバレッジ(レシオ)型通貨スワップのフォワードレートと決済額の関係

通貨スワップの決済

想定元本が変動しない(レバレッジ(レシオ)型では無い)場合は、は下図になりますが、決済額(灰色)はプラスのみでした。 想定元本が変動する(レバレッジ(レシオ)型:上の図)場合は、決済額(灰色)にマイナスが発生しています。

レバレッジ(レシオ)型ではない通貨スワップのフォワードレートと決済額の関係

通貨スワップの決済

この2つの通貨スワップの違いは、為替レートが73円/米ドルを下回った場合のレバレッジ(レシオ)です。

3. 通貨スワップと通貨オプションの関係」で 行使価格を73円/米ドルとした場合の決済額を示しました。
「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」と「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」として記載していましたが、 上記のレバレッジ(レシオ)型通貨スワップは、「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」が2倍設定されている為替デリバティブ取引と考えることができます。

先ほどと同様に、フォワードレートと決済額の関係を示してみましょう。

まず、レバレッジ(レシオ)型通貨スワップにおける「A:米ドル買・日本円売のオプションの買い」の部分は、先ほどと同じです。

A:米ドル買・日本円売のオプションの買いのフォワードレートと決済額の関係

コール・オプションの決済額

次に、「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」の部分に関してですが、この決済額が2倍になります。
まず、想定元本が100,000米ドルのレバレッジ(レシオ)の無い状態のオプション部分を表示します。

B:日本円買・米ドル売のオプションの売りのフォワードレートと決済額の関係

プット・オプションの決済額

実際には、レバレッジ(レシオ)型通貨スワップでは「B:日本円買・米ドル売のオプションの売り」の部分が2倍になっている訳ですから、 決済額は下記のようになります。

Bの2倍のオプションの売りのフォワードレートと決済額の関係:B×2

プット・オプションの決済額

レバレッジ(レシオ)の無い通貨スワップは、A+Bとなりますが、レバレッジ(レシオ)型通貨スワップは、A+B×2となります。

Bの部分がマイナス評価となりますので、この部分で評価損が大きくなるのです。
レバレッジ(レシオ)型通貨スワップの決済額は、下記のA+B×2となります。

レバレッジ(レシオ)型通貨スワップ:A+B×2

通貨スワップの決済

デリバティブは、様々な条件を付加することによって、本来の用途と全く別物の契約を作り出すことができます。

レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブもその典型的なケースと言えます。



為替デリバティブとノックアウト条項(自動消滅条項)

為替デリバティブかどうかを問わず、デリバティブ取引は、色んな条件を付けることによって、カスタマイズすることが可能です。

その一つが、ノックアウト条項(自動消滅条項)といわれるものです。

似たような条件として、コール条項(プット条項:契約消滅権)というものがありますが、こちらは契約を終了させる権利があるだけで、自動的に消滅する訳ではありません。

ノックアウト条項が付されているデリバティブは、ある一定の条件に該当する場合、契約が自動的に終了します。
こちらは、選択権ではないため、契約を継続することは選択できません。

通貨スワップを例にすると契約内容は、下記のようになります。

ノックアウト型通貨スワップの契約内容

取引約定日 2012年3月31日
当事者1 A商事
当事者2 B銀行
当事者1の支払額 7,300,000円(73円/米ドル)
当事者2の支払額 100,000米ドル
交換サイクル 毎月末
期日 2017年3月31日
ノックアウト条項
自動消滅条項
100円/米ドル以上の円安となった場合、当契約は自動的に終了する


今までの解説と比較すると、ノックアウト条項(自動消滅条項)として、「100円/米ドル以上の円安となった場合、当契約は自動的に終了する」という条件が入っています。

ノックアウト型のデリバティブは、通常、モンテカルロ・シミュレーションという方法で計算するのですが、 シミュレーションで一定の条件に達した場合、それ以降の契約が終了するというように計算します。
モンテカルロシミュレーションの概要は、こちらをご覧下さい。「2.4 モンテカルロ・シミュレーションでの計算の概要

シミュレーションによって、為替レートの推移を作成したものが、下図になります。

為替レートのシミュレーションと行使価格、ノックアウトレート

為替レートのシミュレーション

この契約では、為替レートが100円/米ドル以上の円安となった場合、ノックアウト(自動的に消滅)しますので、 薄緑色になった部分(ノックアウト部分)が自動的に消滅します。

為替レートのシミュレーションとノックアウの関係

為替レートとノックアウト

ノックアウト条項は、評価する時点によって、契約当事者にとってプラスにはたらく場合も、マイナスにはたらく場合もあります。

一般的に、金融機関と事業会社が契約をする際には、金融機関がある一定以上の支払いが発生しないように設定するために、 契約の中に入れるケースが多いと思います。

ただし、年数の長い為替デリバティブの場合、契約時からかなり円高になってしまった場合においては、 ノックアウトによって権利消滅してくれた方が支払額が少なくなる場合もあり、このような場合は、ノックアウト条項(自動消滅条項)がプラスに作用します。

先ほど説明したレバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブは、確実にマイナス額が増えるのですが (もちろん、プラスに増えるように設計することも可能ですが、金融機関サイドはわざわざ設計しません)、 ノックアウト条項に関しては、一概にどちらにとって有利な条件であるかということが分かりません。

実際に評価してみないと、ノックアウト条項によって、「損しているか?」、「得しているか?」というのが分からないので、 専門家で無い限り、判断が付きません。

参考までに、モンテカルロ・シミュレーションによって評価した際の、各施行(シミュレーション)の評価額の分布は下記のようになります。
まず、ノックアウト条項(自動消滅条項)が存在しない場合の評価額の分布は、以下のようになります。
※数値は例示のため、本件の評価額とは異なります。

モンテカルロ・シミュレーションによる評価額の分布

モンテカルロシミュレーション

評価額を見ると、比較的満遍なくシミュレーションによる各施行が分布していることが分かります。
これに対して、ノックアウトが存在する場合、モンテカルロ・シミュレーションによる各施行(シミュレーション)の評価額の分布は下記のようになります。

モンテカルロ・シミュレーションによるノックアウト型為替デリバティブの評価額の分布

モンテカルロシミュレーションとノックアウト

ノックアウト条項(自動消滅条項)が存在する為替デリバティブと、ノックアウト条項(自動消滅条項)が存在しない為替デリバティブを比較すると、 ある一定水準以上の円安(例えば、100円/米ドル以上)になった場合、為替デリバティブが消滅しますので、評価額のプラスの分布が少なくなります。
利益が大きく発生する場合が自動的に消滅してしまうためです。

この2つを比べると、ノックアウト条項(自動消滅条項)が無い場合のデリバティブ評価額は+9.9百万円でしたが、 ノックアウト条項(自動消滅条項)が存在する場合の為替デリバティブの評価額は+5.2百万円と減少しています。
※数値は例示のため、本件の評価額とは異なります。

このような場合、ノックアウト条項(自動消滅条項)は、評価額を引き下げるために為替デリバティブに付加されているといえます。



ギャップ・トリガー付為替デリバティブの考え方

評価損益が大きくなる要因として、ギャップ・トリガー付の為替デリバティブがあります。

レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブの際に記載しましたが、 ギャップ型、ギャップ・トリガー付という表現も、あまり外資系金融機関の契約書には無いように思います。
こちらも、日本の金融機関(特に銀行)特有の用語に思います。
※全ての金融機関がこの言葉を使っている訳ではないと思いますので、ご留意下さい。

ここで記載するギャップ・トリガー付の為替デリバティブとは、下記のようなものです。
@通貨オプションの場合は、行使価格がコールオプションとプットオプションで異なる
A通貨スワップの場合は、ある一定の為替レートよりも大きい場合と小さい場合で受取額と支払額が異なる

先ほど、レバレッジ(レシオ)型の為替デリバティブについて説明しましたが、 レバレッジ(レシオ)型は想定元本が変動するタイプです。

ギャップ・トリガー付とは、行使価格が変動するタイプです。レバレッジ(レシオ)型と区別すると、 「想定元本」、「行使価格」のとちらが変動するかが異なると思ってください。

ギャップ・トリガー付の契約は、通貨スワップを例にすると、以下のようになります。

ギャップ・トリガー付通貨スワップの契約内容

取引約定日 2012年3月31日
当事者1 B商事
当事者2 A銀行
当事者1の支払額 @73円/米ドル以上の場合:
7,300,000円(1ドル=73円)

A73円/米ドル以下の場合:
8,300,000円(1ドル=83円)
当事者2の支払額 100,000米ドル
交換サイクル 毎月末
期日 2017年3月31日


先ほども記載しましたが、ギャップトリガーある一定の為替レートよりも大きい場合と小さい場合で受取額と支払額が異なるものです。
上記の契約では、為替レートが73円/米ドル以上の場合は、1ドル=73円で米ドルを購入できるため、プラスになります。
為替レートが73円/米ドル以下の場合は、1ドル=83円で米ドルを購入することになるため、10円/米ドル以上は確実に損失になる訳です。



デジタル・オプション(バイナリー・オプション)について

ギャップトリガーを考える際には、デジタル・オプション(バイナリー・オプション)に関する理解が必要となります。
ここで、少しデジタル・オプション(バイナリー・オプション)について解説します。

ギャップトリガーは、上記のように、73円よりも円高になった場合、10円のマイナスが発生します。
このようなオプションを、デジタルオプション又はバイナリーオプションといいます。

バイナリーオプションは、FX会社で取引が増えてきた、あれです。

昔は、デジタルオプションという言い方が一般的でしたが、今はバイナリー・オプションという言い方の方が一般的になってきました。

デジタルオプション(バイナリーオプション)は、デジタル(0か1かの二択)でオプションが行使できるタイプの取引です。

今回のケースでいうと、73円よりも円高になったら、10円を支払うという、「73円を超えるか超えないかだけ」で判断することになります。

通常の通貨スワップや通貨オプションは、為替レートに連動して損益が変わりますが、デジタルオプション(バイナリーオプション)は、受取ることができる金額(支払う必要がある金額)は、固定されています。

巨大な損失、巨大な利益が発生する訳でもなく、決済の方法が理解しやすいため、最近、急激にFX取引で利用されるようになってきました。

ギャップトリガー付の為替デリバティブは、まさに、このデジタルオプション(バイナリーオプション)が付加されています。

ギャップトリガー付通貨デリバティブは、通常の通貨スワップに、デジタルオプション(バイナリーオプション)の売りを合成して、キャッシュフロー(決済額)を作成することができます。

通常の通貨スワップは、A+Bでした。

デジタルオプション部分をCとすると、ギャップトリガー付通貨スワップは、A+B+Cとして表現することができます。

ギャップ・トリガー付為替デリバティブのキャッシュ・フロー

ギャップトリガー付通貨スワップで発生するキャッシュフロー(決済額)を前回と同様に作成してみます。

まず、Aは従来と同じです。

A:米ドル買・日本円売のオプションの買いのフォワードレートと決済額の関係

コール・オプションの決済額

またBも従来と同じです。

B:日本円買・米ドル売のオプションの売りのフォワードレートと決済額の関係

プット・オプションの決済額

「C:デジタルオプション(バイナリーオプション)」部分は、下記のようになります。

C:デジタルオプションのフォワードレートと決済額の関係

バイナリーオプション

これらを合作してギャップトリガー付通貨スワップ(A+B+C)のキャッシュフローを作成することになります。

この取引の場合は、73円よりも円高になった場合、10円の損失が発生するのですが、 為替フォワードレートの下がり方とは別に一気に損失が拡大しますので、大きな評価損が発生することになります。



当社の評価業務の特徴

yenbridge(エンブリッジ)では、為替デリバティブ取引については、バルク評価を行っております。
バルク評価は、大量の取引を一定のフォーマットを利用し簡便的な評価を実施することから、 従来のデリバティブ評価を含めたバリュエーションと比較すると、 時価評価の際の価格を大幅に削減することが可能となります。

具体的な評価の内容、金額に関しては、 こちら からお問い合わせ下さい。

電話番号

お問合わせフォーム



為替デリバティブに関する情報:YENLAND



投資リスク管理